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あきらめさせる仕組み

M-1グランプリの出場資格は、
コンビ結成から10年以内とされています。
これはくすぶっている若手に、
飛躍の場面、日が当たる場面を作るという意味があると思います。

ただ、一方で、「あきらめさせる仕組み」になっていると言えます。
お笑い芸人というのは、心からお笑いの好きな人が選ぶ仕事です。
そして、「好き」というのが猛烈なモチベーションとなり、
バイトをしながら、夜に劇場に立つ人も珍しくないでしょう。
「いつかは売れる」という気持ちを持ちながら、
バイトと掛け持ちしながら、ステージに立ち続ける。

M-1グランプリは、チャンスを与える場所であり、あきらめさせる場所。
「好き」という気持ちだけでは、お笑いは続けられないということを
認識してもらう役割もある。客観的評価を与えることで、
「おまえは、そんなに面白くないよ」ということをわからせる。
そういう仕組みになっているのだと思います。

10年というのはけっこう長い。
ビジネスであれば、10年を待っている余裕は多分ありません。
おそらく6カ月がいいところ。
今やっていることが、ちゃんとビジネスとして成り立っていくのか。
それは、6カ月あれば、はっきりとわかります。(早い人は3ヵ月くらいでわかると思います)

起業に関する相談を受けることがある。
僕自身が起業したので、
その先輩として話を聞いて欲しいということでしょう。
そして、僕は起業に対して、反対することはありません。
成功するか、失敗するか、それは本当のところ、やってみなければわからないからです。

ただ、撤退時期については、ちゃんと話すようにしています。

「半年やってみて、ダメだったら、やめたほうがいいですよ」

もうちょっと頑張れば、必ず好転する。世間に認められる。
踏み出したことで、引っ込みがつかなくなり、
そういう希望を抱いてしまう。ただ、大概の場合、好転することはありません。

ビジネスするには、お金がかかります。
だから、傷口の浅いうちに撤退を決める。
もう一度挑戦できる余地を残しておく。
それが大事だと思うのです。