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ある少年のその後

その少年を初めて取材したのは、彼が19歳の頃。
大きな期待を受けて入団するものの、
プロ1年目はその期待には及ばない成績。
マスコミにマイナス面ばかりを書かれることで
随分とナーバスになっていたと思う。
人の目を見ることもなく、
取材の間も、どこか警戒しているような受け答えだった。

その後は順調に成長を遂げ、
押しも押されぬ大エースとなり、
メジャーリーグへと戦いの舞台を移した。

少年は33歳になり、今もメジャーリーグで投げ続けている。

自分のことを守ることに一生懸命だった少年は
時を重ねる中で、自分ではなく、周りへと目を向けるようになっていた。

今年11月には、私費を投じて、野球の練習施設をこの岩手に作る。
それは、この岩手に野球を愛する人を一人でも増やしたいという思いから。

自分のことしか考えられない人生は、本当につまらない人生と彼は言う。

人を動かす力を持っている人は、その力の使い方が問われる。
自分の持っている力を使って、世の中をよくしていきたい。
多くの人を元気づけていきたい。そう言葉を繰り返した。

少年は本当に素晴らしい人間になっていた。