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魂の駆動体

神林長平さんというSF作家の「魂の駆動体」という作品があります。
だいぶ昔に読んだ本ですが、この「魂の駆動体」の題名に惹かれました。
これから読む方もいると思うので、くわしくは書かないように注意します。

もうクルマが必要なくなった未来に、偶然見つけた設計図からクルマを作ろうと思い立つ人たちの物語。
クルマで走るという確かな実感を得たくて挑戦を始めます。

世代も深く関係していると思うのですが、
僕はクルマを単なる「移動するための道具」には思えなくて、
やはり「魂の駆動体」だと思っています。
自分の手で操り、目的地を目指す。
機嫌が悪い時は運転が粗くなったり、
逆に浮き立つような気分の時には、窓を全開にして走ってみたり。
そういう心の動きをクルマは表現してくれます。

長年愛用してきた社用車一台を入れ替えることになりました。
このクルマとは今日でお別れです。
僕を、そしてライト・ア・ライトのスタッフを、
いろいろな場所に連れていってくれたこと、
たくさんの仕事の荷物を載せて走ってくれたことを思い出す。
このクルマにはいっぱい思い出があります。
事務所の外に停まっているクルマを見ながら、今仕事をしています。

新しいクルマが来れば、そちらが日常の一部になるだろうし、
今あるどこか寂しい気持ちは薄れていくのかもしれません。
ただ、こういう気持ちはなんだか忘れたくないですね。
僕にとっては単なる鉄の塊ではありませんでした。
本当に働き者で、故障もしなかった。
下手な運転でキズを付けてごめんなさい。
そして、いつもいっしょに走ってくれて本当にありがとう。