山田芳裕さんの「しわあせ」という漫画があります。
元々、山田さんの漫画が好きで、
その中でもとりわけ好きなのが「しわあせ」という作品です。
この漫画の舞台は2033年で、
バブル期を謳歌した主人公はおじいさんです。
2033年の日本は
非常に健全で、やさしい社会。
それぞれが空気を読んで、
暴力的なものもなく
みんなが波風立てずに暮らしています。
そういう穏やかさは幸せなはずですが、
おじいさんにとってはどうにも歯がゆい。
荒々しさを周囲にまき散らしていきます。
「健全で幸せだけれど、それは楽しいのかい?」
と呼びかけているような気がします。
何だか今の世の中にちょっとだけ似ているような気がします。
健全であること、差別はいけないこと。
もちろんそれには異論がない。
ただ、物分かりが良すぎる社会というのは何だかつまらない。
毒気が抜かれた社会というのは何だか嘘っぽい。
この漫画の舞台は、2033年の日本。
もう遠くない。
そして、僕はこの主人公と同じように
その頃、いい歳のおじいさんになっています。
自分がどんなおじいさんになっているか、いろいろと想像しています。
ちなみにこの漫画が描かれたのは1991年。山田さんの予見ぶりにはすごいものがあります。