以前勤めていた博報堂の東京本社には、
たくさんのコピーライターがいました。
当時一緒に仕事をしていた30代のコピーライターがいました。
僕よりちょっとだけ年上でしたね。
そして、何よりも売れっ子。
案出し会議の前日夜に、
「仕事が詰まってて、何もやってない。午後一からの会議だから
明日の午前中にやる」
と言っていたのですが、彼は午前中の2時間で120本のコピーを書いていた。
この生産性にも驚きましたが、仕上げたコピーは一定の品質になっており、
ただの数合わせではないことがわかるものでした。
正直、これはとてもかなわないなと思ったのです。
元々能力に優れる人が、さらに猛烈な努力をしている。
これはいくら頑張ってもかないそうにないと正直絶望した。
彼は東京大学出身でした。
東京大学がすごいわけではなく、
東京大学に入る人というのは、
仕事の生産性を上げるための
仕組みづくりが本当にうまい。
時間のないところで、品質を上げるために
どうすればいいのか。
それを考え続けて、
自分に一番合った生産性の上げ方を
研究している。
そういう部分もすごいと思ったのです。
僕はこの絶望と呼べる経験をしてよかったと思う。
もし、こういう経験をしていなかったら、
岩手という小さなマーケットで、
「自分が仕事ができる」みたいな間違った理解を
していたような気がするのです。
すごい人間に出会うことで、広い世界を知ることで、
自分の能力というものがよくわかる。
そして、この方法ではかなわないけれど、
自分が太刀打ちするための方法を考えるようになりました。
長くなるので、ここでは書きませんが、
僕が見出した、僕なりの仕事の仕方は、やはり今の自分の特徴になっています。
そういう意味でも、絶望した経験は、
ちゃんと自分の糧になっていると実感できるのです。